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心身ともに健康でいきいきした職場作りに欠かせない考え方!ワーク・エンゲージメントって?

KOB
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病院や施設でセラピストの教育と管理に従事されている方は、日々セラピストの質の向上に向けて取り組まれていると思います。一方でセラピスト個人への仕事の要求レベルや負担が大きくなるとメンタルヘルス不調が生じるリスクがあり、そのジレンマに悩みを持つ方も多いのではないでしょうか?
精神的に健康な状態で、かつ質も保証されたセラピストの育成を進めていく上では、「ワーク・エンゲイジメント」という概念が重要となります。

ワーク・エンゲージメント構成する3つの要素

まず、ワーク・エンゲージメントの定義を確認しましょう!

ワーク・エンゲージメントは、仕事に関するポジティプで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。ワーク・エンゲージメントは特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である。

Schaufeli & Bakker, 2004

…難しいですね

すごく噛み砕いて表現すると

「ワーク・エンゲージメントの高い人は、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得ていきいきとしている状態です!」

では、ワーク・エンゲージメントを構成する3つの要素を確認してみましょー

活力

エネルギッシュで、傷ついてもへこたれずに立ち直るこころの回復力、仕事に対する惜しみない努力、粘り強い取り組みなど。

熱意

仕事への深い関与、仕事に対する意義や熱意、ひらめき、誇り、挑戦の気持ちなど。

没頭

仕事に集中し、幸せな気持ちで夢中になることから、時間経過の速さ、仕事から離れることの難しさ

次は「ワーク・エンゲージメント」という概念がどのように生まれてきて、その概念の位置づけを確認していきましょー

ワーク・エンゲイジメントとバーンアウトとの関係

まず最初にワーク・エンゲイジメント研究の第一人者であるシャウフェリ教授の言葉をみてみましょー

自分は長年、バーンアウトの提言と予防に従事することで労働者の幸せ(well-being)に貢献したいと考えていた。しかし、それだけでは労働者の幸せに貢献するには十分でないことが分かった。たしかにバーンアウトしていないことは幸せであることの一部ではあるが、それがすべてではない。バーンアウトしないからといって、必ずしも幸せであるとは限らないからだ。本当の幸せにつなげるためには、バーンアウトを防ぐとともに、仕事でいきいきとした状態を高める必要があるのではないか。

島津明人:新板ワーク・エンゲイジメント-ポジティプ・メンタルヘルスで活力ある毎日を-. 東京都, 労働調査会, 2014, 7; pp10.

ワーク・エンゲイジメントは「熱意」「活力」「没頭」の3つの下位概念があり、ワーク・エンゲイジメントの高い職員は、活力に溢れ、仕事に積極的に関与

一方、バーンアウトは「疲弊」「冷たい対応」「やりがい低下」の3つの下位概念があり、バーンアウトした職員は疲れ切って仕事への熱意が低下

両者は対になる概念と提唱されましたが、両者の概念が完全に負の相関すると仮定することが困難点もあり、別個の概念として考えられることもあるみたいだよ

ワーク・エンゲイジメントと関連する概念

ワーク・エンゲイジメントと関連する概念

 ◯バーンアウト
 ◯職務満足感
 ◯ワーカーホリズム

それぞれの概念が、「活動水準」と「仕事への態度・認知」との2つの軸によって位置づけられています!

バーンアウトとの関連

ワーク・エンゲイジメントは、仕事への態度・認知が肯定的で活動水準が高いのに対して、バーンアウトは、仕事への態度・認知が否定的で活動水準も低いことがわかります。エンゲイジしている人は、仕事が楽しいと思い、仕事から活力を得てイキイキしているのに対して、バーンアウトしている人は、仕事で疲れ切っていて「しごとがなんてもう嫌だ」と思い。仕事への自信をなくしているので、当然、仕事でいきいきすることはありません

職務満足感との関連

職務満足感の定義

自分の仕事を評価してみた結果として生じる、喜ばしいあるいはポジティプな情動状態

Locke,1976

ワーク・エンゲイジメントが仕事を「している時」の感情や認知のことを指すのに対して、職務満足感は仕事「について」、あるいは仕事「に対する」感情や認知のことを指します。つまり、職務満足感の方がより認知的な要素を重視しています。エンゲイジメントには活性化(いきいき)という要素が含まれ、職務満足感には飽和(ゆったり)という要素が含まれる

ワーカーホリズムとの関連

ワーカーホリズムの定義

過度に一生懸命に強迫的に働く傾向

Schaufeli, Shimazu, & Taris, 2009

活動水準が高く、仕事に多くのエネルギーを注いでいる点で、ワーク・エンゲイジメントと共通していますが、ワーカーホリックな人は「強制的に」働く傾向を持つのに対して、エンゲイジメントの高い人は「楽しんで」働く傾向を持っている点が異なっています。つまり、ワーカーホリズムは仕事への態度が否定的である点で、ワーク・エンゲイジメントと異なっています。

ワーク・エンゲイジメントを高まる要素

ワーク・エンゲイジメント高める要素

①仕事の資源

②個人の資源

仕事の資源

仕事の資源とは…

◯仕事の要求度や要求度に関連する身体的、精神的な負担を軽減し、

◯仕事上の目標達成を促進し、

◯個人の成長や発達を促進したすけるための物理的、社会的、組織的な仕事の側面である

Schaufeli, & Bakker, 2004

つまり、仕事の資源は、職員の成長や、学習、進歩をもたらすような内発的動機づけとしての役割と、仕事の目標を達成するために機能する外発的動機づけとしての役割の2つの機能を持っています

仕事の資源リスト

事業場レベル

 ◯経営層との信頼関係
 ◯変化への対応
 ◯個人の尊重
 ◯公正な人事評価
 ◯キャリア形成
 ◯ワーク・セルフ・バランス

部署レベル

 ◯上司・同僚の支援
 ◯経済地位/尊重/安定報酬
 ◯上司のリーダーシップ
 ◯上司の公正な態度
 ◯ほめてもらえる職場
 ◯失敗を認める職場

作業・課題レベル

 ◯仕事のコントロール
 ◯仕事の意義
 ◯役割明確さ
 ◯成長の機会

個人の資源

個人の資源とは…

個人の「内部」にある心理的資源であり、積極的な対処スタイル、自己効力感、組織での自尊心、楽観性、レジリエンス(粘り強さ)などが該当します。

仕事の要求度ー資源モデルとワーク・エンゲイジメント

ワーク・エンゲイジメントは、仕事の資源や個人の資源によって高められ、その結果、心身の健康、仕事や組織に対するポジティブな態度、仕事のパフォーマンスに繋がります。つまり、ワーク・エンゲイジメントが仕事の資源や個人の資源とさまざまなアウトカムとの関係を媒介していると考えられます。これらの関連を1つのモデルとして統合したのが、仕事の要求度ー資源モデル(Job demands-Resource Model: JD-R モデル)です。

健康障害プロセス

仕事の要求度(仕事のストレッサー)→ストレス反応→健康問題を関連を説明

動機づけプロセス

仕事の資源/個人の資源→ワーク・エンゲイジメント→ポジティブな態度の説明

JD-Rモデルは「健康障害プロセス」と「動機づけプロセス」それぞれが「健康・組織アウトカム」にどう影響しているか示してモデルだね。

もう一つの特徴として、資源がワーク・エンゲイジメント向上だけでなく、ストレス反応軽減につながることを示していることだね。

資源を充実させることが、健康の増進と生産性向上ことを両立させる鍵になることを示してるかも。

参考図書

ABOUT ME
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リハタマ代表/理学療法士/博士(医療福祉教育・管理)/修士(OMPT))
理学療法士として、回復期・通所リハ・老健・クリニックを経験し、現在もクリニックで臨床を継続しています。主に徒手理学療法を中心に勉強していく中で、体系的に学びたいと思い、修士課程で国際徒手理学療法コース(Orthopedic Manual Therapist:OMPT)を卒業しました。 自分自身も様々な教育を受け、新人指導や科長として施設の運営など教育・管理に携わる機会が増えていきました。そして、教育・管理ってどうするの?臨床ではエビデンス求めるのに、教育・管理に根拠(エビデンス)は必要ないの?って疑問に思い、博士課程で医療福祉・教育管理分野に進学しました。 大学院で学ぶ中で、リハビリテーション分野の教育・管理分野の原著論文の少なさに驚きました。また、自分は大学院で教育・管理を学びましたが、リハビリテーション分野の方々が教育・管理を気軽に学ぶ場がないことに気づきました。 この現状を解決するために「リハタマ」の運営を決意しました。 まだスタートしたばかりの「リハタマ」ですが、メンバーの皆さまとリハビリテーション分野の教育・管理を共に育むことができたら嬉しいです。
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