省察的実践家とは?-様々な状況変化が生じる臨床に対応できる医療専門職になるために
第6回リハタマ教育・管理セミナーの内容の一つに
『省察的実践家』
がキーワードとなっています。
医療の細分化・高度化と患者のニーズの複雑化が同時並行に進み
臨床では、自身の知識や技術、能力、価値観を超える問題に直面した時、不安や戸惑いを感じると思います。この状況を突破するために
『省察的実践家』の考え方が重要になります!
予習に使ってくださいね。
省察的実践家とは?
過去の自分の経験を見直してそこから学びを得たり、診療におけるあいまいで複雑な問題を構造化したりするために、『振り返り』をツールとして用いる医療者¹⁾
実践する専門家は自分のそれまでの知識や技術、能力、価値観を超える問題に直面した時、不安や戸惑いを感じると思います。この状況を突破するために、それまでの経験を総動員して何らかの行動を起こし、直面する状況に変化をもたらす。問題をなんとかしのいだ後に、今回直面した状況の変化を評価し、教訓(実践の理論)を導き出す。この繰り返しによって、「状況と対話」し、「行為の中の省察」を通じて、専門家は自ら学び、解決策を身につけ、発達していく²⁾。
省察的実践家をどう育てるの?²⁾
フォーマルに学んだ知識や技術と、それまで蓄積した経験から得た実践の理論が統合された「zone of mastery」の領域に基づいて、毎日の業務を行っている
その時点でのzone of masteryで対処できる限り、特にひっかかりなく過ごし、無意識に仕事がこなせる状態である
しかし、医療現場では「予想外のこと」「あるいは驚き」に出会うことが多く、zone of masteryで対処できないことは多い
予期せぬ出来事に対処しているその時に、なんとかその場を切り抜けるためにおこなう一連の振り返り
省察的実践家として成長する専門家は、この驚きや予想外の事態が終了した後の振り返りを行い、『言語化』している。
つまり、事態が終わった後に「あの事態はなんだったのか」「どういう意味があるのか」というテーマのもと、できればチームや同僚で、話し合うことが重要
この振り返りから新たな自分なりのまとめ=実践の理論を導き出し、また自分のプロフェッショナルとしての成長の課題を見出し、学びの次のステップを具体的に設定していく
驚きや予想外の事に関するこれらの3つの振り返りを行うことで、zone of masteryの領域は豊かになり、自然に行える仕事のレパートリーが増え、実践する専門家として「一回り大きくなった」ということができる
クリニカルジャズ(症例検討会)を通した省察的実践³⁾
日本におけるクリニカルジャズは、EBMと臨床経験の振り返りを調和させつつディスカッションを進める教育セッション(症例検討会)
クリニカルジャズの流れ
SOAPによる記録
◎うまくいったこと
◎改善すべきこと
◎感情
◎Next Step~学びの課題
クリニカルクエッション(CQ)の抽出
PICOによるCQの整理
STEP1-4について発表しディスカッション
STEP1-5から導き出された今後の臨床に応用できるコツをパールとして短い1文にまとめる
クリニカルジャズと省察的実践家
『振り返り』はクリニカルジャズにおいて認識変容に関わる重要な要素であり、振り返りによって、学習者は学んだことを新たな場面・出来事に遭遇したときに活かす能力を伸ばすことができるといわれている¹⁾。
医学教育学における「振り返り」は「明確な答えのない複雑で難解な問題に対応するため考えること、その思考のプロセスには目的やあるべき結果が伴う」。
行為の中の省察(reflecton in action)
STEP1:症例の記録
の内、臨床において印象的な出来事に遭遇した際、なんとかその場を乗り切る過程
行為に基づく省察(reflecton on action)
STEP2-5を得る過程
行為のための省察(reflecton for action)
STEP6のた今後の臨床に応用できるコツをパールとして短い1文にまとめる過程
参考文献
1) 横林賢一: ポートフォリオおよびショーケースポートフォリオとは. 家庭医療, 2009, 15(2): p32-44.
2)藤沼康樹: 省察的実践家(Reflectie Practitioner)とは何か. 日本プライマリ・ケア連合学会誌, 2010, 33(2): p215-217.
3)横林賢一: クリニカルジャズ(Clinical Jazz)とは何か. 日本プライマリ・ケア連合学会誌, 2010, 33(3): p322-325.