ポートフォリオとは
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主体性を育むeポートフォリオによる教育の背景

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「主体性を育む」

新人教育をしていく上で重要なテーマです!

ですが、具体的に主体性を育むにはどうすればいいのでしょうか?

そのヒントが「eポートフォリオ」にあると思います。

今回は「eポートフォリオ」がどんなもので、なぜ「主体性を育む」新人教育に効果的なのかをみていきましょー

なぜ新人教育にeポートフォリオ?

ポートフォリオは、もともと紙ばさみや作品ファイルを意味します。建築家やデザイナー、モデル、カメラマンなど個性や感性、才能などで勝負する人はポートフォリオを持っています。ポートフォリオを見ると、もって生まれた才能、資質など、数値化できない個性や能力などが見えます。

鈴木敏江:ポートフォリオで未来の教育-次世代の教育者・指導者のテキスト‐. 日本看護協会出版会. 2019.8; p6.

教育分野における
ポートフォリオとは、

『学習者が自身の学習や活動内容に関する様々な記録を収集・整理したもの』

eポートフォリオとは、

『学習者が探究活動や課外活動,資格・検定等の実績をインターネット上に蓄積する「学びのデータ」.蓄積したものを教育者が閲覧して指導に役立てたりするもの』

期待される効果

学習の証拠を記録や保存にとどまらず、蓄積された学習のプロセスを省察し、自身の強み弱みの把握から今後のプランを設定し、その行為を習慣化し主体的な学習を
身につけることが期待されている。(田邊ら、2017)

ポートフォリオの利点・欠点

ポートフォリオ

利点

●学習成果の可視化・成長の実感・モチベーションの維持
●振り返り・リフレクション・自己評価がしやすい
●継続的な学習者の資質・能力の成長や達成を評価できる
●目標に向かって課題に取り組みやすい
●課題の明確化する
●新人と指導者の対話が強化される
●コーチングを行いやすい
●周囲との共有しやすい

欠点

●指導者の適切なコーチングが必要
●活用のための準備・説明が必要
●記録することの負担
●運用基準の不備(運用方法が不統一)
●総括的評価には向かない
●量が膨大になる

eポートフォリオ

利点

●内容の再配列や編集、統合が容易である
●画像、音声、動画などのマルチメディア・データを扱うことができる
●多量なデータを様々な記憶媒体へ保存可能で、複製も容易に行える
●いつでもどこでもeポートフォリオにアクセスすることができる
●機関内だけでなく地理的に離れた人々とのeポートフォリオを活用した相互作用を期待できる

欠点

●内容を確認する際に一覧性が低くなりがち
●学習の蓄積を実感しづらい
●ITスキルに大きく依存する
●システム自体やその更新などに依存する

ポートフォリオの種類

ポートフォリオは

①所有者(学生・教師・機関など)
②目的(アセスメント・ショーケース・ディベロップメント・ラーニング)
③過程(コース・プログラム・カリキュラム)

によるタイプ分けがされている。今回は「目的」による分類についてもう少し細かく説明したいと思います。

アセスメント・ポートフォリオ
アセスメントに用いられるe ポートフォリオ.アセスメントのために収集された証拠書類(document)や作成物(artifact)が主な対象である.また,評価の基準となるスタンダード(standard)やルーブリック(rubric)を伴う.

ショーケース・ポートフォリオ
ベストワーク(最良な学習成果:best work)を集めたe ポートフォリオ.例えば,学生は,履歴書(resume,CV)のように,雇用ための出願や面接,自身の能力やスキルを公に表明するために用いる.

ディベロップメント・ポートフォリオ
長期間にわたる継続的な自己・専門性の成長と能力開発のための計画立案(planning)や,そのプロセスにおける引証付けと追跡のための手段を提供するe ポートフォリオ.例えば,学生は大学における個人の自己開発プログラムを計画し,継続的にこのタイプのe ポートフォリオを作成または活用することで,自身の成長を追跡したり,引証付けたりする.

ラーニング・ポートフォリオ
学習の誘導,促進を行い,学習プロセスおよび結果を引証付けるために使われるe ポートフォリオ.学習の途中の未完成物や作業物も含ま,学習プロセスを通して、学習者にリフレクションの機会や足場かけを提供する.

(Stevenson 2006, Arnaud 2006, Jones & Shelton 2006, Heath 2004, Marcoul-Burlison 2006)

それぞれのポートフォリオの特徴を把握し、目的に応じて使い分けたり、組み合わせたりすることが重要だね。

ポートフォリオの特徴の一つとして、教育目的によってカスタマイズできることだね。

ポートフォリオの学術背景

教育・学習理論背景

(植野, 2010)

教育・学習理論は、一般的に4つに類型されます。

①行動主義
②認知主義
③構成主義
④社会的構成主義

行動主義や認知主義といった客観的主義的学習理論では、「教授」に重点が置かれる。
構成主義や社会的構成主義といった構成主義的学習理論では、「学習」に重点が置かれる。

行動主義
学習を行動との変容と捉える考え方

認知主義
学習とは刺激-反応の連合による行動変容ではなく、目的と手段の関係を発見し、それに合わせて新たに構造化されていくことであるという考え方

構成主義
知識は主体自らが行動を起こすことによって主体の中に構成されるとする考え方

社会的構成主義
構成主義の考え方と同様に、知識は自らが構成していくという視点に立ちつつ、特に社会環境や他者との相互作用に注目した考え方

ポートフォリオは構成主義的学習理論を評価すると言われています。
ここからも学習者中心で主体的な学習をサポートするのにポートフォリオが有用である可能性を読み取れるね!

ポートフォリオの3つの機能

次に、Driessen Eらが報告したポートフォリオの3つの機能について確認したいと思います。この3つの機能にそって説明をしていきたいと思います。

Driessen らは、ポートフォリオには3つの機能「①学習者が自らの学びをモニターできること。②教育者がポートフォリオを振り返り(省察)することによるコーチングやメンタリングの側面があること。③学習の成果を蓄積し証拠として挟み込むことで、形成的評価が可能になること。」があると報告しています。

機能1:学習者が自らの学びをモニター

1つ目の「学習者が自らの学びをモニターできること」は、Kolbの経験学習を習慣化することで、自己主導型学習方法を獲得できるというものです。具体的な職場経験・学習をすることで、蓄積された経験・学習を証拠の記録をポートフォリオに挟み込み、その内容を省察します。そこから、自分の強み弱みを把握し今後のプランを設定します。最後にプランを基に職場での試行や活用をすることで、また「経験➡省察➡概念化➡実践」ことでKolbの経験学習を繰り返すことができます。この過程の中で自己主導型学習方法を獲得できると期待されています。

ポートフォリオを活用した経験学習による指導方法に関しては、他に記事を書くのでちょって待ってってください!

機能2:形成的評価

ポートフォリオ評価はMillerのピラミッドの頂点にあたるDose(行動)を評価できる可能性があると述べています。そして、ポートフォリオ評価の中に下段のすべての項目を含めることにより、Millerのピラミッドのすべてを網羅することができ形成的評価が行える可能性があると述べています。Show how(表現力)にはOSCE(客観的臨床能力)・Mini-CEX(簡易版臨床能力評価表)、Knows how(応用力)にはCBT(PCを用いた客観試験)・MEQ(改良型記述問題)、Knows(知識)にはMCQ(多肢択一形式)などをポートフォリオ評価に組み込むことが重要だと考えています。さらに、ピラミッドの頂点に行くほど、臨床評価の真正性が高くなると言われています。

eポートフォリオを活用した学習では、学習プロセスにおいて評価が学習の一部として組み込まれ一体化しており、切り離すことができません。これは、評価すること自体が学習そのものであるという考え方に基づいています。
ポートフォリオを使用した評価では、学習してきた蓄積・過程を含めて評価するため、頑張ってきたことに対しても評価してあげることができます。指導者も学習したきた課程の蓄積があるため、良かった点・悪かった点を把握することができ、次の指導に活かすことができます。この評価のイメージが学習の氷山モデルです。

振り返りによるコーチング

eポートフォリオは振り返りの機会を増加すると言われています。eポートフォリオのコンテンツの一つにリフレクティブ・ポートフォリオと呼ばれるタイプもあり、振り返り(リフレクション)を習慣化する機能が備わっています。
まず、現状を把握し、目標設定を行い、目標に向かって学習を進めていきます。その過程でeポートフォリオによる振り返りを習慣的に行っていきます。しっかりと目標に向かっているときはいいのですが、目標からズレてしまっている時に指導者によるズレの修正の支援、つまりコーチングが必要となります。eポートフォリオでは学習してきた過程が蓄積しているため、目標からズレてしまった原因の把握、ズレの修正に必要な支援が明確になり、適切なコーチングを行うことができると言われています。

振り返りによるコーチングに関しては、別の記事でもっと詳しく解説するね。

参考図書

ABOUT ME
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リハタマ代表/理学療法士/博士(医療福祉教育・管理)/修士(OMPT))
理学療法士として、回復期・通所リハ・老健・クリニックを経験し、現在もクリニックで臨床を継続しています。主に徒手理学療法を中心に勉強していく中で、体系的に学びたいと思い、修士課程で国際徒手理学療法コース(Orthopedic Manual Therapist:OMPT)を卒業しました。 自分自身も様々な教育を受け、新人指導や科長として施設の運営など教育・管理に携わる機会が増えていきました。そして、教育・管理ってどうするの?臨床ではエビデンス求めるのに、教育・管理に根拠(エビデンス)は必要ないの?って疑問に思い、博士課程で医療福祉・教育管理分野に進学しました。 大学院で学ぶ中で、リハビリテーション分野の教育・管理分野の原著論文の少なさに驚きました。また、自分は大学院で教育・管理を学びましたが、リハビリテーション分野の方々が教育・管理を気軽に学ぶ場がないことに気づきました。 この現状を解決するために「リハタマ」の運営を決意しました。 まだスタートしたばかりの「リハタマ」ですが、メンバーの皆さまとリハビリテーション分野の教育・管理を共に育むことができたら嬉しいです。
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