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なぜ新人教育にeポートフォリオ?

KOB
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なぜ新人教育にeポートフォリオが有用なの?

❶新人教育記録の蓄積、❷ポートフォリオによる評価、❸自己主導型学習方法獲得の支援、❹ポートフォリオによるコーチングの有用性・利便性、❺ポートフォリオ・eポートフォリオの利点・欠点、の5つの観点から説明したいと思います。

eポートフォリオが皆さんの新人教育に役立てれば幸いです。

新人教育記録の蓄積

皆さんは、新人に以下のように言われたことはありませんか?

先輩はどうやって新人の時に勉強してきたんですか?

KOBは聞かれたことがあって、言葉でこんなことやってきたよって曖昧に答えた記憶があります。

もし、ポートフォリオを作成していれば、

このポートフォリオをみて!

ポートフォリオには自分がやってきた学習の記録が蓄積・整理されているため、ポートフォリオを新人にみせて、説明すれば具体的な新人の時の勉強方法を教えてあげることができます。eポートフォリオではデータを共有するだけで、他の新人にも共有することができます。

指導者もこのような疑問はありませんでしたか?

どうやって新人教育すればいいの?

今までこの施設ではどんな新人教育をやってきたんだろう?

他の施設ではどのような新人教育を行っているのだろう?

何人もの新人指導を行っていくと、新人の数だけポートフォリオが作成されます。つまり、施設としての新人教育ポートフォリオが蓄積されていきます。それを解析していくことで、施設としての新人教育の形を作っていくことができるのではないかと期待しています。

もし、地域等でネットワークが確立されているのであれば、施設間でポートフォリオを共有しそれぞれの新人教育を知ることができます。

eポートフォリオであれば、簡単に情報共有を実現することができるのです!

ポートフォリオによる評価

皆さんは、新人の時に症例発表したりした後、先輩たちにコテンパンにされて

あんなに調べて頑張ったのに…

しっかり指導したつもりなんだけど…

こんな風に思ったことはありませんか?

今一度ポートフォリオとはどんなものなのか見直してみましょう!

教育学において「ポートフォリオ」は「学習者の成果や省察の記録、メンター(優れた助言者・指導者)の指導の評価の記録などをファイルなどに蓄積・整理していくもの」

横林賢一: ポートフォリオおよびショーケースポートフォリオとは. 家庭の医学. 2010;15: 32-45.

授業等における学習者の学習の状況や成果をアセスメントしたり、継続的な学習者の資質・能力の成長や達成をアセスメントしたりするものである。

森本康彦: 教育分野におけるeポートフォリオ. ミネルヴァ書房. 2017.2; p26.

つまりポートフォリオを使用した評価では、学習してきた蓄積・過程を含めて評価するため、頑張ってきたことに対しても評価してあげることができます。指導者も学習したきた課程の蓄積があるため、良かった点・悪かった点を把握することができ、次の指導に活かすことができます。この評価のイメージが学習の氷山モデルです。

森本康彦: 教育分野におけるeポートフォリオ. ミネルヴァ書房. 2017.2; p16 参考

さらに、臨床業務だけでなく日々様々な業務を行っていると思います。例えば、委員会活動・業務提案・インシデントレポート等です。これらの活動もポートフォリオに蓄積・整理することで社会人基礎能力の評価にも生かせるのではないかと考えています。

ショーケースポートフォリオ

ポートフォリオを1年間蓄積していくと、膨大な情報量になります。そこで、1年間の振り返りとしてショーケースポートフォリオを作成することと、ポートフォリオ検討会を実施することが提案されています。

まずショーケースポートフォリオの定義を見てみると

ポートフォリオの一つの形態であるショーケースポートフォリオは、「学習者自身が選んだbest work(最良の仕事・成果)からなるポートフォリオ」と定義され、その中に含まれる具体的な内容としては、「最も優れた成果」や「最も興味深い成果」「最も改善された成果」「最も失望させた成果」「最も気に入った成果」などがあげられる。

横林賢一: ポートフォリオおよびショーケースポートフォリオとは. 家庭の医学 2010;15: 32-45. 

つまり、1年間やってきた中で「最も~」な成果物をショーケースポートフォリオという形で、再構築します。「最も~」な成果物が何かというのは難しいのですが、新人自身が感じたままにまとめてもらってください。

そして、ショーケースポートフォリオを使って新人の1年間の学習の成果を発表してもらい、様々な方々(同僚や先輩)からフィードバックを頂き、振り返りを行うとともに、来年に向けての計画を検討していきます。このような発表会を「ポートフォリオ検討会」と呼びます。

学習の成果は個人的なものではなく、多くの人にとって役立つため、指導者だけでなく同僚・先輩などに対して、ポートフォリオ検討会を通して全員と共有することが大事だと思うよー

自己主導型学習方法獲得の支援

症例検討して、色んなこと言われたんだけど、結局何が悪くて今後どうすればいいの?

何か色々勉強してるけど、結局将来に役立つの?

このような疑問に答えるには、目標設定をしっかりとたて、学習の目的をはっきりさせることが重要だと思うよ。そして、日々の学習記録を蓄積して、よかった点・悪かった点を振り返り、課題を明確にしていけば、疑問を解消出来ると思うよ。

目的・目標設定

ポートフォリオにおける目標設定に対して以下のように言われています。

常にビジョン(目的)とゴール(目標)が見えることで目的意識をもって、ぶれずにゴールへむずからの意思で向かうことが可能となります。「何のために(目的)」「何をやり遂げたいのか(目標)」を常に掲げ、俯瞰することで客観的に考えることができ、クオリティの高い成果をもたらします。目標が明確なために、自分が何をどうすべきか、詳細にイメージすることで自身のパフォーマンスが向上するのです。

鈴木敏江:ポートフォリオで未来の教育-次世代の教育者・指導者のテキスト‐. 日本看護協会出版会. 2019.8; p8.

看護教育のレビューをみると、下記のように述べられています。

ポートフォリオをもとに、学生間や学生と指導者、学生と教員などと成果の内容や目標達成状況などを「共有」し、相互評価を加えることで、学生が「自身の成長を実感する」ものとなり得る。さらに卒後の臨床の場においても日々の経験や学習の記録を可視化できる形で蓄積できれば、客観的な自己の成長過程の評価と同僚や管理者などからの他者評価に活用できる。看護教育においてポートフォリオを活用することは、継続的なモチベーションにつながると考えることができる。

石堂たまき: 看護教育におけるポートフォリオ活用の動向: 文献レビュー. 沸教大学保健医療技術学部論集. 2020. 3. 63-75

このように、ポートフォリオは元々目標設定をしっかりたて、日々の振り返りを行うことにより、目標達成に導くように設計されています。目標に向かって日々振り返りを行っていくことで、継続的な学習を実現し、その中で新人独自の自己学習方法の獲得を支援していきます。さらに目標をいくつも達成することで、目的を達成することができ、キャリア形成支援に役立てることができます。

少し極端な例ですが、目的を「ノーベル賞をとる」とします。ノーベル賞をとるためには様々な研究で成果をあげ、世の中に多大な貢献をする必要があります。そのため、目標を「いくつもの研究成果を残す」「研究成果を世の中に役立てる」とします。この目標を達成するためにも小さな目標をたくさん達成しなければなりません。そして、目標を達成するために現状を把握し、その問題点を振り返り、対策しなければなりません。このようにして目的に向かって自己学習をすすめていきます。

次は「振り返り」の具体的な流れを示したいと思います。

振り返りの階層性

まず医療教育学における「振り返り」は「過去の自分の経験を見直してそこから学びを得たり、診療におけるあいまいで複雑な問題を構造化したりするために、『振り返り』をツールとして用いる医療者」として定義されている。
ここではKolbの経験学習サイクルによる、日々の振り返り・定期的な振り返り・長期的(年間)な振り返り、それぞれの振り返りの関連性についてまとめていきます。

日々の振り返り

日々の臨床や症例検討等を行うと様々な課題が出てくると思います。ポートフォリオがあれば、学習してきた過程が記録されているため、記録をもとに自身の省察(振り返り)、よかった点・悪かった点を確認し課題を見つけることができます。そして、課題に対して改善策を立案し次に生かすことができます。

短期的(1か月)な振り返り

1か月に1回など、定期的な振り返りの面談日を決めることが多いようです。ここでは、一か月行ってきた日々の振り返りから生じた課題に対して振り返りを行い、次の一ヶ月の目標設定を行います。この目標が年間の目標につながってくるようにコーチングしていくことが重要です。

長期的(年間)な振り返り

日々の振り返り・定期的な振り返りの積み重ねが、年間通しての目標に対してしっかり積み重ねてこれたかを振り返りを行います。ここでは、1年間の目標の達成度・成長できたこと・今後成長に必要なこと・次の1年間に向けて目標設定の再検討を行います。方法としては、先ほど紹介したショーケースポートフォリオを使用し、発表を行うことにより振り返りを実施します。この手法はポートフォリオ検討会と呼ばれています。この1年間の積み重ねが5年後・10年後のキャリア形成につながってくるのではないかと考えています。

振り返りの階層性

例えば1年間の目標を立てたとします。1年間の目標を達成するためには、毎月の目標を立てる必要があります。1ヵ月の目標を達成するために、日々の目標(課題)を達成する必要があります。つまり、日々の振り返りをすることで、1ヶ月の目標達成に近づくことができます。また1ヶ月の振り返りをすることで、1年間の目標達成に近づくことができます。最後に1年間の振り返りを行うことで、年間の目標達成度を把握することができます。このように日々・短期的・長期的が階段上につなげることができれば、年間の大きな目標達成に近づくことができるのではないかと考えています。

ポートフォリオには今までの経験・学習の記録が収集・整理されているため、振り返りするときに記録を見返すことができ、かつ客観的に記録を見やすくなるよ。つまり、ポートフォリオは振り返りに非常に有効だと思うよ!

ポートフォリオにおけるコーチングの有用性・利便性

コーチングの有用性

新人1人では振り返りをすること困難です。そのため、指導者(メンター)のコーチングなどによる的確なサポートで、より深い振り返りを行うことができ、効果が高まるといわれています。コーチングしていく上でポートフォリオは有用と考えられています。学習の記録の蓄積・日々の振り返り・定期的な振り返り・長期的(年間)な振り返りをコーチングしていくことで、新人の支援ができるのではないかと考えています。

イメージとして、箱根駅伝ではコーチが選手に定期的に声掛けを行っています。走っている選手に現状を伝達し、現状の振り返ってもらい、次の走行プラン(戦略)を立てます。指導者は、その都度声掛けにより、目標としているタイム・順位を達成できるようにコーチングしていきます。そして、区間ごとでも同様に声掛けを行い、総合的な目標を目指します。最終的な目的として、総合優勝・シード権の獲得などにつなげていくようなイメージです。

コーチングの利便性

指導者と関わる上で新人の時に

自分の考えを上手く伝えられなかった…

一方的にフィードバックをもらって自分の意見が言えなかった…

忙しそうで聞きにくい…

他の先生はどう思ってるんだろう…

eポートフォリオを使えば、指導者と新人の相互的な関わりが作りやすくなるよ。しかもネットワーク上で管理しているため、いつでもとごでもアクセスして新人の課題や意見を確認できるし、他の先輩にもアクセスしてもらえば、簡単に新人教育の状況を把握できてアドバイスをもらえることができるよ!

対面でのフィードバックももちろん重要ですが、どうしても指導者が主導となってしまい、新人が意見を伝えきれないことは多いと思います。ネットワーク上であれば、新人が自分の考えを整理した上で指導者に考えを伝えることができます。

業務時間に質問することができないとしても、eポートフォリオにはいつでもどこでもアクセスすることができるため、質問をeポートフォリオ上に残しておけば、指導者も時間のある時に確認し、答えてあげることができます。

そして、eポートフォリオの最大の利点としては、データとして情報が蓄積されているため、新人教育の状況を他のスタッフに簡単に共有することができ、指導者以外からの助言も得やすくなります。さらに、遠隔地にいる先生などにも簡単に助言をいただくことができます。

ポートフォリオ・eポートフォリオの利点・欠点のまとめ

ポートフォリオの利点・欠点

利点

●学習成果の可視化・成長の実感・モチベーションの維持
●振り返り・リフレクション・自己評価がしやすい
●継続的な学習者の資質・能力の成長や達成を評価できる
●目標に向かって課題に取り組みやすい
●課題の明確化する
●新人と指導者の対話が強化される
●コーチングを行いやすい
●周囲との共有しやすい

欠点

●活用のための準備・説明が必要
●記録することの負担
●運用基準の不備(運用方法が不統一)
●総括的評価には向かない
●量が膨大になる

eポートフォリオの利点・欠点

利点

●内容の再配列や編集、統合が容易である
●画像、音声、動画などのマルチメディア・データを扱うことができる
●多量なデータを様々な記憶媒体へ保存可能で、複製も容易に行える
●いつでもどこでもeポートフォリオにアクセスすることができる
●機関内だけでなく地理的に離れた人々とのeポートフォリオを活用した相互作用を期待できる

森本康彦: 教育分野におけるeポートフォリオ. ミネルヴァ書房. 2017.2; p17.

欠点

●内容を確認する際に一覧性が低くなりがち
●学習の蓄積を実感しづらい
●ITスキルに大きく依存する

参考図書

教育分野におけるeポートフォリオ
eポートフォリオの概要がまとまっています。どのような理論背景をもとにeポートフォリオが構成されているかが、わかりやすく書いてあります。

経営学習論-人材育成を科学する-
組織社会化、経験学習、職場学習、組織再社会科、越境学習の5本柱で内容がまとまっています。特に経験学習の考え方がポートフォリオによく適応できると考え、参考にしました。

コーチングの基本
タイトル通り、コーチングの基本的な考え方が書いてあります。
コーチングを学ぶ入門書としておすすめです!

ABOUT ME
KOB
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リハタマ代表/理学療法士/博士(医療福祉教育・管理)/修士(OMPT))
理学療法士として、回復期・通所リハ・老健・クリニックを経験し、現在もクリニックで臨床を継続しています。主に徒手理学療法を中心に勉強していく中で、体系的に学びたいと思い、修士課程で国際徒手理学療法コース(Orthopedic Manual Therapist:OMPT)を卒業しました。 自分自身も様々な教育を受け、新人指導や科長として施設の運営など教育・管理に携わる機会が増えていきました。そして、教育・管理ってどうするの?臨床ではエビデンス求めるのに、教育・管理に根拠(エビデンス)は必要ないの?って疑問に思い、博士課程で医療福祉・教育管理分野に進学しました。 大学院で学ぶ中で、リハビリテーション分野の教育・管理分野の原著論文の少なさに驚きました。また、自分は大学院で教育・管理を学びましたが、リハビリテーション分野の方々が教育・管理を気軽に学ぶ場がないことに気づきました。 この現状を解決するために「リハタマ」の運営を決意しました。 まだスタートしたばかりの「リハタマ」ですが、メンバーの皆さまとリハビリテーション分野の教育・管理を共に育むことができたら嬉しいです。
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